筑波海軍航空隊記念館の表情
黒崎
それは全くそのとおりで、やはり筑波海軍航空隊記念館は学校っぽいですよね。それから軍隊の建物だったから、「厳めしい」表情を持っていて、「厳めしさ」っていうのは、つまり「権威」っていう事で、この権威を、当時の帝国大学が持っていたという事ですよね。でもその権威の中で勉強している学生達はその特権により戦争に行くことなく、そこで勉強を続けられていた。そのことに彼ら自身はすごく自己矛盾を感じていて、「これでいいのか」とか悩んだりするわけだけど。
その葛藤を作品の中に生むためには、「権威があるんだ大学には」っていうことがセリフじゃなくて、映像で伝わるかどうかがすごく大事だと思うんですよ。
だからそういう場所をずっと探していて、筑波海軍航空隊記念館は本当にぴったりだと思いました。
俳優がロケ地から感じること
黒崎
一つ一つの場所の素晴らしさとかいう意味合いについては、さっきお話したとおりですけども、多分ね、その役者さんがロケ現場に到着する瞬間ってあるじゃないですか。場合によっては前の日にちゃんとそこを見に来て確認することもあるだろうけど、その土地があってお借りしている場所があって、そこに協力して下さっている方が沢山色々な準備をしてくれていて、更に我々の美術スタッフが色々なものを飾ったり作ったりしてその場をお芝居の場所にふさわしいように作り上げていきますよね。そこに俳優が到着して、その場所に足を踏み入れた途端に「どういう気持ちを思ってもらえるかな?」「どういう気持ちを引き起こすことができるかな?」っていう事が、僕にとってはすごく大事なんですよね。
大体このチームがこのシーンをこの作品を撮るためにどれくらいの情熱を持って進んでいるかっていうことが全部そこに凝縮されていると思うんです。その場所を見れば大体わかると思うんです。なので、美術チームの仕事等も含めて、その場所に力があれば、もう監督は何も説明する必要がないと思うのです。そこで何をやるべきか、を俳優たちはもうすっかり理解して感じとると思うのです。だからもうそこで勝負は決しているというか、そういう風に僕は自分自身に言い聞かせています。
黒崎
そうだと思います。イッセー尾形さん(澤村役)も國村隼さん(荒勝文策役)も、柳楽優弥くん(石村修役)も、それをあの場所から感じてくれたんじゃないかなあと。
黒崎
何も言わないですね。特にそれはね、違和感がないからですよ。
例えば窯のところにね、イッセー尾形さんが入ってきて、もうわかりますよね、どういう雰囲気のシーンになるのかとか、自分がどんな表情で、この場所で黙って作業をしていればいいのかとか。あそこまで作り込んでくれていたらね、そんなに言わなくてもね、わかるよって言われると思います。
窯元の皆さんにいろんなプロとしての作業はどうやるのかも全部教えてもらっているわけだけど、でもお芝居として何をやればいいのかみたいなことは、ロケ地に違和感がなかったことでかなり説明が省略されたと思います。
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